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 窓の選び方 エコ編

 
窓の選び方について。設計者それぞれ若干の違いがあるようですが、今回はエコの観点から窓の選定の基準をお話します。
 
壁の断熱には様々なものがあり、丁寧に施工すれば何を選んでもそれなりに断熱性を確保できます。それに比べ、窓から逃げる熱は一般的な壁の4倍~9倍もあります。窓の断熱は大切ですね。
※ 壁の断熱を高性能グラスウール16kg・厚さ10cmとした場合
  (平成28年省エネルギ-基準を18%上回ります)
  4倍は複層ガラスの樹脂サッシ、9倍は複層ガラスのアルミサッシとなります。
 
ところで昔の日本の住宅は『夏をもって旨とすべし』とされていましたが、今では夏になると気温は簡単に35度を超えてしまいます。
実際アスファルトで地面が覆われている住宅地の気温は気象庁が発表する気温よりも高く、この文章を書いている7月11日15時現在、船橋・自宅3階のベランダ(日陰)の温度は36.8度です。そうなると採り入れる風の温度も37度近く、日陰の室内でも辛く感じます。
ちなみに小生自宅の断熱等級は最高の4となっていて、屋根からの熱は感じません。夏、暑い時はブラインドを下ろしてエアコンをつけるしかありません。
この時のエアコンの役割を考えてみましょう。仮に外気温37度の時、室内温度は27度程度であればそれなりに快適です。外気温度との差は10度です。
 
冬の場合、小生が住んでいる船橋は外の温度が夜間マイナス2度くらいまで下がります。その時の室内温度は20度くらいを目標としています。
20~22度あれば、小生の場合セーターを着ていれば快適で、寝るときも薄手の羽毛布団1枚で大丈夫です。布団に入ったとき「ひやっ」とすることなく、サラサラな状態で心地よく感じます。この時の外気温度との差は22~24度です。
 
前述のように、夏よりも冬の方が快適温度を保つためのエネルギー量は多くなります。今日省エネルギーという視点で家を考えた場合、夏ではなく『冬をもって旨とすべし』に変わってきたと思います。小生はその事を前提に窓やガラスの選定をしています。
具体的には下記のようになります。
 
窓枠のタイプについて
大きな窓は熱の損出も大きくなるので、断熱性がより優れている『トリプルガラスの樹脂サッシ』を採用。予算があるときのは『トリプルガラスの木製サッシ』の採用も検討しますが、逆に小型の窓や大きくても予算を抑えたい場合は『ペアガラスの樹脂サッシ』を採用します。『アルミ単体サッシ』や『アルミ樹脂複合サッシ』は使いません。
 
ガラスのタイプについて
設計者によってガラス選定の考え方が分かれるのですが、『夏よりも冬をもって旨とすべし』と考えると、ガラスは夏の熱線を反射する『日射遮蔽型』ではなく、冬の日差しを採り込み逃がさない『日射取得型』を採用するケースが多いです。
※ 北側のガラスは夏の西日を避けるために『日射遮蔽型』を採用します
 
窓枠・ガラスは仕様・タイプの選定だけではなく、設置する位置も重要です。
西日の扱いも設計者によって考え方が分かれるのですが、小生はエネルギーをより多く消費する冬に『西日も』有効活用できるような手法を採り入れています。
夏の西日はいつまでも長く照りつけて嫌なものですが、前述のとおりブラインドを下ろしてエアコンに頼れば十分快適です。エアコンの効率が向上したので、西日の影響は冬の寒さに比べれば小さいものと考えています。
逆に冬は長い時間陽の光を採り込むために、西日も必要なものとなっています。小生の場合、隣家の位置・高さを測量して図面化し、長い時間『陽の光』を採り込めるような計画をしています。
 
 
 
 

 
写真の住宅は、隣家の屋根越しの陽を採り込むための窓と、自宅の屋根越しの陽を採り込むための窓を設置しています。もちろん昼に南側から陽を採り込むことも十分に配慮しています。
ただし、陽を採り込むだけでは家を暖めることは出来ません。陽が当たらない日もあります。エアコンや蓄熱式の床暖房や断熱性の助けになる『ツインタイプのプリーツスクリーン』や『カーテン』『障子』を上手に利用することも大切です。
 
春や秋は陽を採り込むことよりも通風の計画が重要だと思います。
冬場の寒さに慣れた体はちょっと暖かくなっただけで暑いと感じます。
秋のエアコンが要らなくなったばかりの時期も同様に、通風によって快適な状態を保つ必要があります。
 
 
 
 

 
大きな庇がある場合は、雨の吹き込みを気にせず引き違い窓による通風が良いと思いますが、庇が無い場合は滑り出し窓を採用することが多いです。少しの雨であれば吹き込みを気にせず窓を開けておけるので便利です。
防犯を考慮する場合は高い位置に窓を付けたり、オーニングというタイプの窓を設置することもあります。
このように窓を開けたまま出かけられるような配慮(降雨・防犯)も必要です。
 
 
 

 
吹き抜けがある場合は、高い位置に窓を付けることで熱気(暖かい空気は軽く高い所へ向かいます)を抜くこともできます。
小生宅の場合は、梅雨の期間はエアコンを付けなくてもそれなりに快適に過ごすことが出来ています。参考にしてください。
 
 
2018.07.19