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 耐震診断と補強工事

 
東日本大震災の直後、数件の耐震補強工事の依頼を受け実際に補強工事をしましたが、その後の数年間は相談がなくなりました。耐震補強の必要がある建物は小生の自宅周辺にも多くあるように思いますが、費用や意識の面で補強工事に踏み切れないといったところでしょうか?
ところが今年に入り立て続けに数件の耐震補強工事の依頼がありました。テレビも次の地震に備えるべく番組が増えたような気がします。その影響でしょうか?なにはともあれ良い事だと思います。
 
今回は耐震診断と補強工事の意義について考えたいと思います。
家を建て替えるには30坪程度の住まいで2000万円程度の予算が必要です。しかし耐震補強であればその1/10程度の費用で効果が期待できます。もちろん費用については建て替えも耐震補強も建物の仕様や状況に左右されますが、耐震補強の方が安く済むことは明らかです。
 
次に耐震補強工事の手順について説明します。
まずは耐震診断。建物の現状を調査します。主な調査項目は平面(間取り)、基礎や柱、梁など構造部分の施工状況や現状の他、目で見える範囲の損傷状態の確認を行います。
調査結果を元に図面を造り、耐震診断プログラムに従い計算をすることで上部構造評点が算出されます。必要な強度に対して現状ではどのくらいの強度があるのかが数値で示されるのです。
数値については下記のようになっています。
 
 ・0.7未満     :倒壊する可能性が高い
 ・0.7~1.0未満 :倒壊する可能性がある
 ・1.0~1.5未満 :一応倒壊しない
 ・1.5以上     :倒壊しない
 
ちなみに9年前に新築し小生宅は1.8でした。評点は階ごとに2方向(建物の長手方向、短手方向)算出し、その最小値(一番弱い階の弱い方向)を採用します。耐震補強はその値が1.0以上(1.0~1.5未満:一応倒壊しない)になるよう補強が必要な部分を見出し、補強していくことになります。
もちろん更なる安心が得られるよう評点が1.5以上になるよう心がけています。とはいえ耐震補強には限界があります。
地盤や基礎に問題がある場合は根本的な解決が困難だからです。新築では可能な材料の強度指定や許容応力度計算による構造の安全確認は出来ません。調査によって確認できる要素にも不確実な部分があるので、上部構造評点の値も不確実なものと言えます。また基礎や床、屋根の強度が不足しているケースが多く見受けられます。
そのため『出来る限り丈夫になるように補強する』ということになりますが、耐震性能が向上することは確かです。
 
いくつか事例を紹介したいと思います。
 
 ・耐震補強により上部構造評点が0.5だったものを1.1に出来た事例
 ・増築した新しい部分を残して減築した事例
 ・耐震補強を諦め建て替えた事例
  
造耐震補強により上部構造評点が0.5だったものを1.1に出来た事例
 
築50年で断熱材も充填されていない住宅でしたが、基礎には大きな亀裂はなく比較的良好な状態でした。雨による被害も無く、何度かリフォームを繰り返し手入をしているので比較的状態の良い住まいでした。
地震による倒壊を防ぐことと、断熱材未充填による冬の寒さ対策をしたいという要望でした。耐震補強の際にはリフォームで失われた耐震壁を補うために新たに壁を設け、既存の耐震壁も使用材料の強度を上げることで耐震性を上げることにしましたが、2階はもともと耐震性が確保されていたことと費用を抑えたいという要望があり、工事は1階だけで済ませました。
具体的には1階の外壁に面する全ての壁下地(石膏ボード)をはがし、断熱材を充填し、壁を復旧する際に耐震壁となる部分には通気性のある構造用ボードを使用しました。断熱材を充填しない間仕切り壁でも耐震壁にする部分があり、同じく構造用ボードを貼り直しました。
構造用ボードは天井裏まで達しているので1階の天井はほとんどをはがし、断熱材を充填。2階は手をつけないので、この作業にて1階の熱が2階に逃げないようにしました。
またサッシ自体は交換せず、窓ガラスだけを全て断熱性のあるペアガラスに入れ替えました。
断熱改修により使い勝手の向上も目指しました。これまで扉で仕切られていた玄関ホールや水回りと、リビングダイニングを一体としました。断熱性の向上と深夜電力による蓄熱式の床暖房により1階の全ての部屋が『寒くない1つの空間』となり、夜間・早朝の寒さから解放され、入浴前後の寒さによるストレスも無くなりました。
  
 
仕増築した新しい部分を残して減築した事例 (建築事例「小さな家」)
 
20年前に増築した築50年以上の建物を耐震補強し、物置として使いながら身内が来た時に泊められるようにしたいというものでした。
古い部分は基礎がなく、土台を束という短い柱で支え、束は束石という石に乗っているというものでした。床は多少うねり平らではありません。屋根瓦も破損し雨漏りが有り屋根の改修だけでもかなりの費用がかかる事が予想されました。
そこで減築というリノベーションを提案しました。このケースでは物置兼、宿泊用の建物としては30㎡程度(増築した新しい部分)で十分でした。よって70㎡分(築50年部分)を解体し、新しい部分だけを耐震改修することにしました。
実際の工事では増築した新しい部分も基礎・構造部分(柱、梁)・屋根を残して解体し、間取りも替え、断熱材を充填し、断熱サッシも設置し、高断熱・高気密な建物に生まれ変わりました。
外壁には部分的に山武杉を張り建替え前の建物の雰囲気を残し、浴室は建替え前のハーフユニットバスを再利用し、小さなキッチン兼洗面も造り、小さいながらも快適な家(物置)となりました。もちろん、耐震改修により丈夫な建物となっています。
 

 
 
耐震補強をあきらめ建て替えた事例
 
古い家をリフォームして住み続けたいと依頼を受けました。
伺うと建物の傷みがかなりあり、経験的にリフォームしても住み続けることは出来ないと直ぐに判断できました。
とはいえ家族の住みたいという思いを強く感じたのでリフォーム案を示しながら、大工さんに一部解体を伴う調査もすることということになりました。
リフォーム案は基本的に受け入れられました。しかしその後の大工さんによる解体調査(依頼主さんも立会いました)では地盤沈下、柱や梁の腐朽(シロアリによる食害も確認)がかなり進んでいることが判明しました。建物の歪みも大きく、リフォームは断念し建て替えることになりました。
建て替えにはいろいろなケースがあります。今回のケースは建て替え後に住むのは依頼主の両親ですが、将来的には依頼主が相続し住み続けるということでそれなりの規模の住まいとして建築することになりました。
 
参考にしてください。
 
2017.03.26

耐震診断と補強工事


東日本大震災の直後、数件の耐震補強工事の依頼を受け実際に補強工事をしましたが、その後の数年間は相談がなくなりました。耐震補強の必要がある建物は小生の自宅周辺にも多くあるように思いますが、費用や意識の面で補強工事に踏み切れないといったところでしょうか?
ところが今年に入り立て続けに数件の耐震補強工事の依頼がありました。テレビも次の地震に備えるべく番組が増えたような気がします。その影響でしょうか?なにはともあれ良い事だと思います。
 
今回は耐震診断と補強工事の意義について考えたいと思います。
家を建て替えるには30坪程度の住まいで2000万円程度の予算が必要です。しかし耐震補強であればその1/10程度の費用で効果が期待できます。もちろん費用については建て替えも耐震補強も建物の仕様や状況に左右されますが、耐震補強の方が安く済むことは明らかです。
 
次に耐震補強工事の手順について説明します。
まずは耐震診断。建物の現状を調査します。主な調査項目は平面(間取り)、基礎や柱、梁など構造部分の施工状況や現状の他、目で見える範囲の損傷状態の確認を行います。
調査結果を元に図面を造り、耐震診断プログラムに従い計算をすることで上部構造評点が算出されます。必要な強度に対して現状ではどのくらいの強度があるのかが数値で示されるのです。
数値については下記のようになっています。
 
 ・0.7未満     :倒壊する可能性が高い
 ・0.7~1.0未満 :倒壊する可能性がある
 ・1.0~1.5未満 :一応倒壊しない
 ・1.5以上     :倒壊しない
 
ちなみに9年前に新築し小生宅は1.8でした。評点は階ごとに2方向(建物の長手方向、短手方向)算出し、その最小値(一番弱い階の弱い方向)を採用します。耐震補強はその値が1.0以上(1.0~1.5未満:一応倒壊しない)になるよう補強が必要な部分を見出し、補強していくことになります。
もちろん更なる安心が得られるよう評点が1.5以上になるよう心がけています。とはいえ耐震補強には限界があります。
地盤や基礎に問題がある場合は根本的な解決が困難だからです。新築では可能な材料の強度指定や許容応力度計算による構造の安全確認は出来ません。調査によって確認できる要素にも不確実な部分があるので、上部構造評点の値も不確実なものと言えます。また基礎や床、屋根の強度が不足しているケースが多く見受けられます。
そのため『出来る限り丈夫になるように補強する』ということになりますが、耐震性能が向上することは確かです。
 
いくつか事例を紹介したいと思います。
 
 ・耐震補強により上部構造評点が0.5だったものを1.1に出来た事例
 ・増築した新しい部分を残して減築した事例
 ・耐震補強を諦め建て替えた事例
  
造耐震補強により上部構造評点が0.5だったものを1.1に出来た事例
 
築50年で断熱材も充填されていない住宅でしたが、基礎には大きな亀裂はなく比較的良好な状態でした。雨による被害も無く、何度かリフォームを繰り返し手入をしているので比較的状態の良い住まいでした。
地震による倒壊を防ぐことと、断熱材未充填による冬の寒さ対策をしたいという要望でした。耐震補強の際にはリフォームで失われた耐震壁を補うために新たに壁を設け、既存の耐震壁も使用材料の強度を上げることで耐震性を上げることにしましたが、2階はもともと耐震性が確保されていたことと費用を抑えたいという要望があり、工事は1階だけで済ませました。
具体的には1階の外壁に面する全ての壁下地(石膏ボード)をはがし、断熱材を充填し、壁を復旧する際に耐震壁となる部分には通気性のある構造用ボードを使用しました。断熱材を充填しない間仕切り壁でも耐震壁にする部分があり、同じく構造用ボードを貼り直しました。
構造用ボードは天井裏まで達しているので1階の天井はほとんどをはがし、断熱材を充填。2階は手をつけないので、この作業にて1階の熱が2階に逃げないようにしました。
またサッシ自体は交換せず、窓ガラスだけを全て断熱性のあるペアガラスに入れ替えました。
断熱改修により使い勝手の向上も目指しました。これまで扉で仕切られていた玄関ホールや水回りと、リビングダイニングを一体としました。断熱性の向上と深夜電力による蓄熱式の床暖房により1階の全ての部屋が『寒くない1つの空間』となり、夜間・早朝の寒さから解放され、入浴前後の寒さによるストレスも無くなりました。
  
 
仕増築した新しい部分を残して減築した事例 (建築事例「小さな家」)
 
20年前に増築した築50年以上の建物を耐震補強し、物置として使いながら身内が来た時に泊められるようにしたいというものでした。
古い部分は基礎がなく、土台を束という短い柱で支え、束は束石という石に乗っているというものでした。床は多少うねり平らではありません。屋根瓦も破損し雨漏りが有り屋根の改修だけでもかなりの費用がかかる事が予想されました。
そこで減築というリノベーションを提案しました。このケースでは物置兼、宿泊用の建物としては30㎡程度(増築した新しい部分)で十分でした。よって70㎡分(築50年部分)を解体し、新しい部分だけを耐震改修することにしました。
実際の工事では増築した新しい部分も基礎・構造部分(柱、梁)・屋根を残して解体し、間取りも替え、断熱材を充填し、断熱サッシも設置し、高断熱・高気密な建物に生まれ変わりました。
外壁には部分的に山武杉を張り建替え前の建物の雰囲気を残し、浴室は建替え前のハーフユニットバスを再利用し、小さなキッチン兼洗面も造り、小さいながらも快適な家(物置)となりました。もちろん、耐震改修により丈夫な建物となっています。
 

 
 
耐震補強をあきらめ建て替えた事例
 
古い家をリフォームして住み続けたいと依頼を受けました。
伺うと建物の傷みがかなりあり、経験的にリフォームしても住み続けることは出来ないと直ぐに判断できました。
とはいえ家族の住みたいという思いを強く感じたのでリフォーム案を示しながら、大工さんに一部解体を伴う調査もすることということになりました。
リフォーム案は基本的に受け入れられました。しかしその後の大工さんによる解体調査(依頼主さんも立会いました)では地盤沈下、柱や梁の腐朽(シロアリによる食害も確認)がかなり進んでいることが判明しました。建物の歪みも大きく、リフォームは断念し建て替えることになりました。
建て替えにはいろいろなケースがあります。今回のケースは建て替え後に住むのは依頼主の両親ですが、将来的には依頼主が相続し住み続けるということでそれなりの規模の住まいとして建築することになりました。
 
 参考にしてください。
 
2017.03.26