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 耐震改修の依頼から引き渡しまで (2)

 
設計事務所に依頼するとお金がかかってしまうというイメージを持っているかもしれません。
前回は800万円程度の費用をかけて耐震改修の他、断熱改修やバリアフリー、浴室改修をした例を紹介しましたが、今回は耐震改修と改修部分の復旧のみにして費用を200万円以下に抑えた例を紹介したいと思います。
 
依頼を受けた建物は築40年の住宅でした。耐震診断の結果は耐震性が必要耐力の34%で、倒壊の恐れが高い状況でした。実際東日本震災の時に外壁に亀裂が入り、それを見て耐震改修を依頼することにしたそうです。
改修前は1、2階それぞれに二間続きの部屋がありました。2階は個室なので改修の際に仕切っても良いのですが、1階は使い勝手上どうしても仕切らずに使いたいとの要望です。
そこで、まずは既存の壁すべてを補強した場合の耐震性をチェックしましたが、一応倒壊しないレベルである必要耐力の100%には至りませんでした。
更なる検討の結果、あまり出入りのない東側の廊下へ続く障子の開口部を耐震壁にすることで、何とか必要耐力の100%に改善されることが分かり了解を得ました。
それでは主な改修部位ごとに写真を使って解説したいと思います。
 
 
. 2階の二間続きの部屋を仕切る工事
 
4枚の引き違いの襖とその上の壁を撤去しました。 
 

 
耐震壁にするために柱を2本入れた後に耐震用のボードを両面に貼っていきます。耐震用のボードは、土台や梁から一定間隔をあけて貼っても効果が認められた工法で施工しています。壁の端には隣の部屋に行き来するためのドアを設置しました。その後、壁紙を張って完了です。
ちなみに費用節約のためフローリングの張替えはしていません。
  

 
 
. 2階収納内部と収納手前の壁の補強
 
既存の壁を剥がした後、耐震用のボードを壁に張ります。

 
もちろん押し入れ内部は棚板を撤去してから耐震用のボードに交換します。棚板は新しいものに変更し、扉も交換します。
改修前は天袋もありましたが、費用削減のため天袋の代わりに床から天井までの背の高い収納扉を使用しました。
  

 
 
収納の無い壁は単純に古い仕上げ材を剥がし、耐震用のボードに交換するのですが、エアコンや換気扇がある場合は一旦取り外してから付け直す作業が必要となります。

 
また壁紙は耐震補強した壁以外の部分も張り替え一新しています。
白いボードが耐震用のボードで、茶色っぽい壁は一般的なクロス下地の石膏ボードです。
   

 
 
. 1階和室の改修
 
1階和室の改修はちょっと手間がかかっています。

 
まず鴨居などの造作部材を撤去し、柱を1本新設します。和室なので真壁用の三面無地(節のないもの)を入れました。その後、補強用のボードを張り、長押などの造作材を設置します。
一般的な洋室は大壁(柱を見せない仕上げ方)なので耐震用のボードを柱に直接釘で貼り付けるのですが、真壁(柱を見せる仕上げ方)の場合は柱に壁を受ける下地材を打ち付けてから、その下地材に耐震用のボードを付けていきます。
最後に左官仕上げをして完了。この部屋は押し入れや南側の廊下の壁も同様に補強しました。
   

 
 
D. 外壁
 
外壁のヒビが入った部分は、亀裂をV型に削りシーリングを充填し、塗装仕上げをします。

 
和室の床の間(付け書院)に面する外壁でした。予算節約のため内部の工事はしていません。写真のとおり鉄筋にて補強しました。
鉄筋は2階の床梁と1階の土台に丈夫なビスで固定しています。強度の高い補強法ではありませんが、費用の割に効果は期待できます。同様の補強は2箇所で採用しています。

 
 
2017.12.04