監理のやりとり
工務店と設計事務所にはそれぞれのノウハウがあります。設計事務所が監理する現場は一般的に監督1人、設計者1人となります。現場監督もそれぞれに経験があるので、同じ工務店の監督でも現場で出す指示は異なります。教科書に書いていないこと、一般的には行われていなくても必要なことも多々あります。数人で現場をみることでミスを減らし良い建物が出来るのです。
今回は建て主さんに了解を得て、現場で行う監理の際実際に行った指示やお願いをいくつか紹介します。もちろん指示しなくても実施されることも多々ありますが、徹底することでミスを防ぎ精度を上げることが期待できます。
また、図面通りに出来ることが必ずしも良いとは限りませんし、図面からの情報を見落とすこともあります。設計者として現場に立つことで気がつくこともあり、費用面も配慮しながら変更を提案し実施することもあります。
少々長いので、時間と余裕のある時に読んでみてください。
今回は見える部分を紹介します。
造作・大工工事
◆ 窓枠などは仕上げ面を意図的にずらす事で後から予想外に凸凹してしまうことを避けています。趣旨を説明し、全体的に統一された納まりになるようにしています。
◆ 家具制作の際、合板の切り口を隠すために無垢の木をあてがいます。きれいに納めたいので木の角を揃えるよう依頼。
◆ 窓の発注の前にガラスの仕様(透明・防犯など)・サッシの色・仕様・取手の形状など、オプションで追加していたりセミオーダーで寸法を変えている物があるので、サッシメーカーと再確認。
◆ 階段は詳細図を作成し、全ての段板の詳細寸法・ノンスリップ溝の形状・壁や天井との納め方を確認。
◆ 家具は監督さんが詳細図を作成し、仕様・寸法・組み立て方などを確認。
◆ 外壁の通気と屋根裏の通気が特殊な納まり方で繋がるため、工事手順の確認をし止水方法も指示。
◆ 屋根が台風時にめくれてしまう事のないよう特殊なビスで固定する必要があり、事前にビスの仕様を確認。
◆ 構造用の金物をつけ忘れ無いよう、検査してから次の工程に進むよう依頼。
◆ 屋根の通気層に熱気がこもらないようにするために、敷設する遮熱シートの向きを再確認。
◆ 庇や軒の出寸法を間違えないよう図面にて再確認。
◆ 屋根板金が納まりにくい箇所があるため、事前に作業手順や納め方・防水シートの仕様など確認。
◆ 軒の換気口が一般的な納まりではないため、手順・位置など再確認。
◆ 浴室の防湿とタイル下地にセメント板を使用。湿気の抜き方・防腐処理の仕方を確認。
◆ ベランダ防水・下地の作り方・排水方法・位置・排水管の色など再確認。
◆ 外壁下地には耐震ボードと非耐震の通気ボードを貼り分けているため、固定のための釘の仕様と固定間隔を再確認。
◆ アルミサッシ下部の防水シートの仕様、敷設方法は施工会社ごとに標準仕様があるため今回はどのような仕様を採用するか、再確認(防水シートとコーナーカバーを使用)。
仕上げ工事
◆ 階段板は工務店が長年保存していた銘木が使用できる(サービス)ことになり、材種・使用範囲を決めてお願いする。
◆ 家具や造作材は無垢の木なので、左官仕上げの際に濡れることで木のアクが染み出ないようにあらかじめ塗装をするよう作業手順を確認。
◆ 木を仕上げに使う場合は樹種・等級・節の有無などを再確認し、必要であればサンプルを提出してもらう。
◆ フローリングの貼る方向、固定にはどんな接着剤や釘を使用するか、あらかじめ隙間を開けて貼る必要があるか、など再確認。
◆ 左官仕上げの場合、色だけではなく塗り方のパターン(古和釜の家はフラット仕上げです)などを再確認。
次回は、見えない部分を中心にお話します。
2017.01.20