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 見積りの話

 
工事費を下げる事と見積もり金額の妥当性を確認するために有効なのは、数社の工務店による相見積もりをすることです。施工会社は依頼を受けた案件を受注するために低価格と施工力をアピールします。数社から提出された見積もり書を比較することで工事費の妥当性を確認することもできます。公共工事の場合は数社を指名し見積もりを提出してもらい、最安の会社に施工してもらう指名競争入札が行われます。
しかし、相見積もりをしない設計事務所があることも事実です。当事務所もしていません。相見積もりをするメリットよりも、しないメリットの方が上回るからです。今回はその理由を紹介したいと思います。

工事費がおおよそいくらになるかは設計者としての経験である程度は見当がつきます。依頼主によって要望は違っても、性能を確保するために必要となる基本的な仕様は変わりません。仕上げ材料やプランニングが違っていても、設計者としての経験だけではなく手掛けてきた案件の工事費を工種や施工会社ごとにまとめておくことで、最終的な工事費と設計中に想定している工事費との差異を最小限にとどめることが可能です。さらに工事費の妥当性も実績と比較し確認することができるので、設計者としての強みとなり相見積もりにより競争させる必要がなくなります。
 
また当事務所では基本計画が完了した時点で工事を担当する施工会社(この時点では仮決めです)に詳細な原価見積もりを提出してもらいます。(原価見積もりとは下職さんやメーカー、商社から上がってきた見積もり金額に施工会社の経費や利益を上乗せする前の、いわば生の見積もりです。)
たとえばメーカーによって異なりますが、キッチンは30%~半額近い金額で見積もられてきます。値引き率は施工会社の実績などにより異なり、通常は値引きされた金額に施工会社としての必要経費や利益を上乗せした金額を見積もり書に記載し提示します。しかし、原価を示すことで依頼主の信頼も得やすく、この見積もり書を元に詳細な仕様を決めて設計していくことで想定外の予算オーバー、そのための減額設計をすることがなくなります。減額のための仕様やプランの変更は依頼主や設計者にとっては面白くないものです。
 
施工会社を仮決めするメリットは他にもいくつかあります。施工会社にはそれぞれに得意なことがあります。自社で家具を造れる、設備機器や建材を他社よりも安く仕入れられる、施工費が他社よりも安い、良い職人さんを下職さんとして揃えている、等。
依頼主の要望に合う施工会社を早期に決めることで、設計段階から担当する施工会社に合わせた仕様・工法を選択することも可能です。その結果工事費の無駄がなく、きれいに造るための段取りまで調整出来た設計をすることが可能です。

設計監理する案件の分布があまり広くない場合(当事務所は千葉県内と東京都の東部)は、 工事を依頼する施工会社も数社あれば十分です。施工力、信頼性、理念、相性などから現在4社の施工会社と共働しています。
引渡し後のメンテナンスを考えると付き合う施工会社は多くない方がよいです。常時、設計者と施工者の関係が良好に保たれていたほうがメンテナンスの手配がスムースに進みますし、点検などの報告も密にしてもらえます。 施工会社が同じであれば毎回工事を担当する下職さんも同じです。下職さんの顔が分かっていると意思疎通が十分にできます。
余談ですが、同時に進行する案件がある場合、元請けの施工会社が違っても基礎工事や建具屋さんなどの下職さんが同じであるということがよくあります。
『次は○○の現場をお願いします。その際には○○に気をつけてください』
と、 仕事がスムースに進行します。些細なことのようですが、職人さんとの家づくりでは結構大切なことのひとつです。
職人さん皆が当事務所の仕事や大切にしている事など施工上必要な情報の理解が十分に深まっていることで、施工上の指示ミスが防げ効率が上がるというメリットがあります。テレビでは現場でやり直しをさせている様子が放映されていますが、これは指示ミスや指示モレによるものです。ミスやモレの無いよう先回りできることが監理者としての技量です。そしてその技量を補うものが施工者との良い共働関係です。住宅のように細かい指示が多い建物の場合には非常に重要なことです。

設計事務所としての経験が深くなるほど、このように施工会社との関係も深まっていきます。長く住み続ける住宅にとって一番大切な性能の担保を真剣に考えると、やはり設計者と施工者との信頼が深く理解しあえていることは重要なことで、それが住み手のメリットと一致しています。
また設計中に施工会社が分かっていると、依頼主は時間をかけて施工会社について知ることが可能です。契約の直前に担当する工務店が決まったのでは事前にその施工会社について調べ、信頼関係を築いておくことは困難です。時間があれば担当する施工会社の建築事例を確認できますし、担当者の顔がわかっていれば何となく安心でき、お願いもしやすいですね。

家づくりはドライな商取引とは違います。インターネットで調べ簡単に購入できる金額のものではありません。設計者、施工者、依頼主の三者の関係が密で、信頼に満ちたものでありたいです。そのために、設計者と施工者の関係は整えた上で設計監理を受けたいと考えています。
 
2016.09.21

見積りの話


工事費を下げる事と見積もり金額の妥当性を確認するために有効なのは、数社の工務店による相見積もりをすることです。施工会社は依頼を受けた案件を受注するために低価格と施工力をアピールします。数社から提出された見積もり書を比較することで工事費の妥当性を確認することもできます。公共工事の場合は数社を指名し見積もりを提出してもらい、最安の会社に施工してもらう指名競争入札が行われます。
しかし、相見積もりをしない設計事務所があることも事実です。当事務所もしていません。相見積もりをするメリットよりも、しないメリットの方が上回るからです。今回はその理由を紹介したいと思います。

工事費がおおよそいくらになるかは設計者としての経験である程度は見当がつきます。依頼主によって要望は違っても、性能を確保するために必要となる基本的な仕様は変わりません。仕上げ材料やプランニングが違っていても、設計者としての経験だけではなく手掛けてきた案件の工事費を工種や施工会社ごとにまとめておくことで、最終的な工事費と設計中に想定している工事費との差異を最小限にとどめることが可能です。さらに工事費の妥当性も実績と比較し確認することができるので、設計者としての強みとなり相見積もりにより競争させる必要がなくなります。
また当事務所では基本計画が完了した時点で工事を担当する施工会社(この時点では仮決めです)に詳細な原価見積もりを提出してもらいます。(原価見積もりとは下職さんやメーカー、商社から上がってきた見積もり金額に施工会社の経費や利益を上乗せする前の、いわば生の見積もりです。) 
たとえばメーカーによって異なりますが、キッチンは30%~半額近い金額で見積もられてきます。値引き率は施工会社の実績などにより異なり、通常は値引きされた金額に施工会社としての必要経費や利益を上乗せした金額を見積もり書に記載し提示します。しかし、原価を示すことで依頼主の信頼も得やすく、この見積もり書を元に詳細な仕様を決めて設計していくことで想定外の予算オーバー、そのための減額設計をすることがなくなります。減額のための仕様やプランの変更は依頼主や設計者にとっては面白くないものです。
 
施工会社を仮決めするメリットは他にもいくつかあります。施工会社にはそれぞれに得意なことがあります。自社で家具を造れる、設備機器や建材を他社よりも安く仕入れられる、施工費が他社よりも安い、良い職人さんを下職さんとして揃えている、等。 
依頼主の要望に合う施工会社を早期に決めることで、設計段階から担当する施工会社に合わせた仕様・工法を選択することも可能です。その結果工事費の無駄がなく、きれいに造るための段取りまで調整出来た設計をすることが可能です。

設計監理する案件の分布があまり広くない場合(当事務所は千葉県内と東京都の東部)は、 工事を依頼する施工会社も数社あれば十分です。施工力、信頼性、理念、相性などから現在4社の施工会社と共働しています。
引渡し後のメンテナンスを考えると付き合う施工会社は多くない方がよいです。常時、設計者と施工者の関係が良好に保たれていたほうがメンテナンスの手配がスムースに進みますし、点検などの報告も密にしてもらえます。 施工会社が同じであれば毎回工事を担当する下職さんも同じです。下職さんの顔が分かっていると意思疎通が十分にできます。

余談ですが、同時に進行する案件がある場合元請けの施工会社が違っても基礎工事や建具屋さんなどの下職さんが同じであるということがよくあります。
『次は○○の現場をお願いします。その際には○○に気をつけてください』
と、 仕事がスムースに進行します。些細なことのようですが、職人さんとの家づくりでは結構大切なことのひとつです。
職人さん皆が当事務所の仕事や大切にしている事など施工上必要な情報の理解が十分に深まっていることで、施工上の指示ミスが防げ効率が上がるというメリットがあります。テレビでは現場でやり直しをさせている様子が放映されていますが、これは指示ミスや指示モレによるものです。ミスやモレの無いよう先回りできることが監理者としての技量です。そして、その技量を補うものが施工者との良い共働関係です。住宅のように細かい指示が多い建物の場合には非常に重要なことです。

設計事務所としての経験が深くなるほど、このように施工会社との関係も深まっていきます。長く住み続ける住宅にとって一番大切な性能の担保を真剣に考えると、やはり設計者と施工者との信頼が深く理解しあえていることは重要なことで、それが住み手のメリットと一致しています。
また設計中に施工会社が分かっていると、依頼主は時間をかけて施工会社について知ることが可能です。契約の直前に担当する工務店が決まったのでは事前にその施工会社について調べ、信頼関係を築いておくことは困難です。時間があれば担当する施工会社の建築事例を確認できますし、担当者の顔がわかっていれば何となく安心でき、お願いもしやすいですね。

家づくりはドライな商取引とは違います。インターネットで調べ簡単に購入できる金額のものではありません。設計者、施工者、依頼主の三者の関係が密で、信頼に満ちたものでありたいです。そのために、設計者と施工者の関係は整えた上で設計監理を受けたいと考えています。
 
 2016.09.21